たけしの忙中閑話

最初に二本足で立ったサルの話

 先日、風呂からあがって何の気なしにテレビの衛星放送を見ていたら、フランスのテレビ局が作ったという「人類の進化」にまつわる番組の内容が目に留まり、あまりの面白さに夢中で最後まで見てしまった。要は、数多いサルの中で、なぜ一部のサルだけが二足歩行をするようになり、やがてヒトへと進化していったか、という話なのだが、その説明ぶりに実に説得力があって、思わず膝をたたいてしまったのだ。

 簡単に言うとこういうことになる。その昔、木の上で「楽園」を謳歌してたサルたちに、ある時期、地球の厳しい気候変動が襲った。やがて森はどんどんと姿を消していき、木の上にも食べ物が枯渇するようになった。地上に降りればそこでなにがしかの食物が得られることはわかっているが、そこにはトラだのライオンだのという猛獣が待ち受けていて、とても危険で降りられたものではない。しかし、このままでは絶滅の危機が待っている。サルの群れは焦燥に駆られた。

 そのとき、一匹の勇気あるサルが意を決して地上に降り立った。当時のサル界の「常識」から言えば、まさに「狂気の沙汰」であった。まさしく命がけの行動である。そのサルは仲間たちの嘲笑を気にすることもなく、勇敢にサバンナの中を進み、その中でようやく食べるものを見つけた。すると、それまで、「馬鹿なことをするやつだ」とそのサルの行動をじっと木の上から見つめていたサルたちが空腹に耐えかねて一匹、また一匹と次第に木から地上に下りてくるようになった。

 こうしてサルたちは「地上」という新天地を「発見」した。しかし、問題はそのあとである。サルたちが木から下りてくるのを待ち受けていた猛獣は次々にサルを襲った。日に日に犠牲者が増えていく。なんとかしなければ、と思い悩んでいた群れのリーダーはある時、ふとあることに気づく。「そうだ。四足のままでいるから背が低く、サバンナの向こうからやってくる猛獣たちを事前に発見できないのだ。背を高くするのは立てばいいのだ!」と。

 しかし、何十万年も四足歩行で暮らしてきたサルが立って歩くというのは至難の業である。来る日も来る日も挑戦は続いた。ほとんどのものがあきらめて、もはや望みのない木の上の生活にやむなく戻ろうとした。しかし、ある時、一匹のサルがふらつきながらも見事に立ち上がって二本足で歩いてみせた。一同、大いに歓喜し(たかどうかは知らないが)、次々とその仕草を真似た。これがいわゆる「猿真似」の始まりである。・・・というのは嘘であるが、とにもかくにも、ここに地球史上、はじめて二足歩行する類人猿の先祖が誕生した、というわけである。

 なぜ、いたくこの話に惹かれたかというと、「進化」というものはすべからく、こういうものだったのではないか、とあらためて納得したからである。現在、地球上に存在する動植物はすべて、こういった「進化」を経て、今日まで驚異的なサバイバルを続けてきた「種」たちである。かれらが「進化」せざるをえなかったのは、例外なく生存を脅かすほどの「環境の変化」、いや、「変化」というよりも、かれらにとっての「悪化」に見舞われたからである。「このままでは死んでしまう。なんとしても生き延びねばならない」という命がけの執念と挑戦が、新しい環境に適応する能力を生み出すのである。

 もう、何が言いたいのか、懸命な読者諸氏にはおわかりでしょう。そうです。苦しい、厳しい、誰も何もしてくれない、などと嘆く暇があったら、我々はこの我々の大先祖であるサルたちのように、勇気をもって「進化」に挑まなければならないのです。木の上でいつまでも指をくわえて怯えているサルでい続けるのか、それとも、勇気を振り絞って地上に降り立ち、先駆けて二本足で立って見せるサルになるのか・・・願わくば後者でありたい、いや、あらねばならないと思い続ける今日、この頃の自分です。
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