たけしの忙中閑話

新しい風

前回に続いてまたまたドラマの話である。ただし、今度は日本のドラマだ。現在、毎週木曜日の午後10時からTBSで「新しい風」という政治を題材にしたドラマが放映されている。政治部に所属する新聞記者がある日突然、大物政治家から誘われて総選挙に立候補することになる。ドラマはその青年政治家の苦闘を追いながら、彼を取り囲む家族や友人たちの目から見た政治の世界を丹念に描いていく。そんなストーリーのドラマである。

なぜ、このドラマに触れるかというと、このドラマの作成に小生、ならびに小生の事務所が多少のお手伝いをしているからである(嘘だと思う人もいるだろうが、番組の終わりにクレジットが流されるところで、毎回、岩屋毅の名前が出てくるのだ!エヘン!)。「政治モノを作るにあたって、ぜひとも岩屋議員のお力をお借りしたい」とTBSからたっての依頼があった、と言いたいところなのだが、残念ながらそうではない(笑)。実はこのドラマのプロデューサーが小生の高校時代の同級生である貴島誠一郎君であり、その彼から「おい、お前くらいしか頼める奴いないから、ちょっと手を貸してくれ」と言われたからなのである。

貴島君は「これまでの政治モノとは違った視点でやりたい。政治というテーマはあくまでも材料だ。選挙や政治活動といったものにある日突然に巻き込まれていく人達の姿を追っていく中で、夫婦愛や家族愛、あるいは友情といったものを描きたいんだ」と言う。ウム・・・そうか。それは面白そうだ。何ができるかわからんが、しからば、とりあえず、なんでも取材してみてくれや、ということで、このドラマづくりの準備が始まったのであった。

まずは主演の吉田栄作さんが議員会館や地元の事務所にやってきた。うちの事務所の女子職員はその日は朝からそわそわして気分が落ち着かなかったらしい。「ワー!」とか「キャー!」とか言ってそれはもう大変な興奮状態であった(笑)。さすがに恰好がいい。すらりとした長身で顔などは小生の半分くらいしかない。日焼けした精悍な顔は男が見ても惚れ惚れとする。小生の選挙区でのライバルも今でいう「イケ面候補」で、そのお陰で毎回難儀をしているが、「こんなのが自分の選挙区で出てこないように・・・」と吉田氏を見ながら思わずそう祈った(笑)。

たけしの懐中時計、時計自体も、その時計が刻む時間さえもいとおしく思えてくるから不思議だ。

 一方では家内が上京した折に吉田氏の相手方になる女優のともさかりえさんと対談形式で取材を受けた。家内もえらく喜んでいたが、その対談につきあっていた貴島君にあとから聞いたところでは、「いやぁ、助かったよ。ともさかさんは当初、代議士の妻の役なんてとてもつとまらない、と言ってたんだが、お前のかーちゃんの話を聞いて、これならできそうだと思ったんだってさ」ということだった(笑)。どう解釈していいのかわからんような話だが、まぁ、なんにせよ役に立てればそれでいい。

さらに活躍してくれたのが、秘書の山口君である。彼は小生が初当選して以来のベテランである。選挙の苦労のことから、浪人中の苦難の日々のこと、さらには国会や党での日常のルーティーンに至るまで、彼はあらゆることに精通している。ドラマのディーテイルについてのアドバイスはほとんど山口君が一人で請け負ってくれた。

ドラマは全部で10回もので、この段階で既に半分くらいが放映されている。小生らの経験もストーリー展開に多少取り入れられてはいるものの、大半は脚本家の方々によるものである。今回のことを通じて「脚本家というのは、たいしたもんだなぁ」とつくづくと思った。毎週、脚本の下書きが議員会館に届き、それをチェックするのだが、「ほーー、なるほどこういう展開になるのか」と読むたびに感心させられる。我々のやることは政治用語の間違いを直したり、演説シーンのセリフを訂正するくらいで、ストーリーはいじっていない。脚本家諸氏も政治についてはちょっと聞きかじった程度だと思うのだが、「本職」が読んでも唸らせるような臨場感ある展開となっているのは、実に見事だと感じる。

吉田氏演じる青年候補は最初の選挙で勝利を予測されながら落選をする。落選をする場面の演出なら自慢ではないが、当方、お手のものである(笑)。投票日の夜、彼が最後に人がいなくなった選挙事務所で壁にコーヒーカップを投げつけて悔しがるシーンがあるのだが、自らの経験が想い出されて思わず目頭が熱くなる。また、吉田候補の幼い娘が町中に張り出された「パパ」のポスターを見て嫌がるシーンなどが出てくるのだが、これもまた、自身の体験を思い出して胸がしめつけられる。

吉田氏やともさかさんらの役者の皆さんの力もたいしたものだと思う。ドラマでは氏は政治部記者という設定なのだが、初めての立候補ともなれば、演説もたどたどしく、態度もどこかぎこちなって当然である。どう演じるのかと思って見ていたが、そのとおりの演技に始まって、回を追うごとに政治家らしくたくましくなっていく過程などを実に見事に演じ切っている。後半近くに出てくる演説シーンなどはなかなかに見事で、すぐにでも来る参議院選挙の候補にスカウトしたいくらいである(笑)。脇を固めている植木等さん(大物政治家役)や野際陽子さん(その夫人役)などのベテランの演技がドラマをきちんと引き締めているのもいい。

テーマがテーマであるせいか、視聴率はいまのところ「いまひとつ」らしいが、貴島君に言わしめると「そもそも政治をテーマにしたドラマをヒットさせようとは自分も思っていない。ただ、こういう作品をきちんと作った、ということを残したいんだ。だから、無理にウケを狙った作り方はしていない」とのこと。自分も縁があって手伝った以上、大いに視聴率を稼いで欲しいと思ってはいたものの、あまりに現実と遊離をした「オチャラケもの」にはして欲しくないと思っていただけに、貴島君の凛たる言にほっと胸をなでおろしたのであった。

「なぜ、主役に吉田さんをもってきたんだい?」と貴島君に聞いたことがある。彼はこう答えた。「一度、挫折を経験して這い上がってきた俳優には、なんというか、、、、存在感が出てくるし、今までになかった力が出てくるんだ。今回はそれに賭けてみたいと思った」と。。。。なるほど、吉田栄作と言えば、デビュー当時はそれこそ今で言う「イケ面俳優」の走りであり、その代表的なスターだった。しかし、その絶頂期に彼は突然、渡米して芸能界から遠ざかったと記憶している。ブラウン菅に再登場し始めたのはここ数年のことだろう。この間、彼なりにいろんな思いをしてきたに違いない。それが今回の演技に活きているのだろう。

そういえば、吉田さんと対談した時に小生、こういうことを言った。「選挙は当選した時は皆さんのお陰、落選した時は自分のせいなんですよ。僕も最初はそうは思わなかったんですけどね。。。だんだん時間がたってくると、まったくそのとおりだと思えるようになってくる。」 吉田氏はしばしの沈黙のあと、こう言った。「岩屋さん、、、、、ほんとにそのとおりですね。役者の世界もまったく同じです。売れてる時はみんなのお陰。泣かず飛ばずになる時はやっぱり自分が悪いんです。僕もそんなことをつくづく考えましたね。。。」 いい男だと思った。

「新しい風」にはそんな人たちの思いがいっぱい詰まっている。まだご覧になっていない読者諸氏におかれてはぜひチャンネルを合わせられたし。なにかしらのメッセージを受け取っていただけるものと思う。小生も現実の政治ドラマにおいていつも「新しい風」でありたい、と思いを新たにさせてもらったところである。

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